2019年面白い海外ドラマはこれ!第71回エミー賞作品賞ノミネート8作品 個人的おすすめポイントを紹介
71st Emmy Nominations Announcement
9月になりました。今年もエミー賞の時期がやってきました!
アメリカテレビジョンアカデミー主催で行われる、TVドラマ、TV映画に贈られる賞です。
今年のエミー賞ドラマ部門作品賞には、8作品ノミネートされています。
年間数百本放送されるドラマの中から選ばれるということは、それだけでもう「おもしろいドラマ」だという証拠。
2019年の今、最高におもしろいドラマと認定された8作品について、詳しく解説した記事を海外ドラマboardさんにて、執筆させていただきました。
第71回エミー賞
— 峯丸ともか (@blua_birdo) 2019年9月2日
今、アメリカで人気のドラマをご存じですか?
ぜひチェックしてみてください!#ゲーム・オブ・スローンズ#ベター・コール・ソウル#キリング・イブ#ThisIsUs #PoseFX #オザークへようこそ#キング・オブ・メディア#ボディガード #emmys2019https://t.co/SALS366i1l
しかし、これだけではまだまだ言い足りない!
もっとたっぷり個人的意見を述べたい!
ということで、このブログで、記事の続きともいえるおすすめポイントをご紹介していきます。
今後、ドラマを見るときの参考にしていただければうれしいです。
それでは、スタート!
『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章
2019年、個人的に面白かったドラマランキングでも1位になりそうな本作。
日米同時放送(2019年4月15日スタート日本時間)を視聴できたのは、本当に貴重な経験でした。
ワクワクしてTVの前に陣取るという興奮は、「海外ドラマファンで良かった!」と実感した体験です。
特に、第3話を観たときの興奮は、一生忘れられません。
最終章の第3話『The Long Night /長き夜』は、話の流れ、予想外の展開、そして、抒情詩の韻を踏むような美しいラストシーンと、完璧ともいえる素晴らしいストーリーです。
作品賞は、『ゲーム・オブ・スローンズ』で固い気もします。
『ベター・コール・ソウル』シーズン4
Better Call Saul Season 4 Comic-Con Trailer | Rotten Tomatoes TV
本作が面白いと感じるのは、絶妙に交錯し合うキャラクターたちの人生が、緻密に作り上げられているところです。
『ブレイキング・バッド』の企画者でもあるショーランナーのヴィンス・ギリガンの物語構成能力は、まさにマジカル!
本家の脇役だったキャラクター、ジミー・マッギル(のちのソウル・グッドマン)と、マイク・エルマントラウトが主役となり、本家『ブレイキング・バッド』の世界に徐々につながっていく描写は、もはや職人芸。
しかも、「悪人と一般人の違い(境界線)とは何か?」という本家のテーマが、『ベター・コール・ソウル』にも見事に引き継がれています。
ジミー役のボブ・オデンカークと、エルマントラウト役のジョナサン・バンクスの、絶妙にとぼけた雰囲気も、愛すべき要因です。
『キリング・イヴ』シーズン2
Killing Eve: Series 2 | OFFICIAL TRAILER - BBC
個人的な感想としては、女性サイコキラーを女性のエージェントが追いかけるというのは、新しい犯罪ドラマのカタチだと感じました。
しかも、主人公のイヴは、エージェントとして特別に優秀というワケでもなく、どちらかどいえばカンのいいおばさん刑事という感じ。
この雰囲気が主演のサンドラにピッタリで、彼女の明るい雰囲気が、残酷なサイコキラーのストーリーを深刻に感じさせず、英国ドラマ特有のブラックユーモアに満ちた作品に仕上げています。
また、殺し屋のヴィラネルは、かなり魅力的なキャラクターです。
賢くて、かわいくて、小悪魔的、そして残酷。
映画『羊たちの沈黙』(1991)のサイコキラー、ドクターレクターのような悪のカリスマ的魅力あふれる人物に仕上がっています。
演じているジョディ・カマーの、殺人を楽しんでいるかのようなサイコパスな演技力もキラキラ光っています。
『THIS IS US』シーズン3
「THIS IS US/ディス・イズ・アス シーズン3」12.4 DVDリリース/10.2 第1~9話デジタル配信開始
主演男優賞は、3年連続でノミネートされているマイロ・ヴィンティミリアに、獲得してもらいたい!
一家の父親として、夫として苦悩しながらも、前向きに生きる男の生きざまを爽やかに演じる姿に、心が洗われます。
ランダル役のスターリング・k・ブラウンも琴線に触れる演技を見せていますが、第69回エミー賞をすでに獲得しているので、今回は、マイロに主演男優賞を贈りたいなぁ。
また、今回のエミー賞で一番うれしかったのは、主演女優賞にマンディ・ムーアが、そして助演男優賞にトビー役クリス・サリヴァンがノミネートされていることです。
二人とも、派手な役柄ではないのですが、確実に周囲に良い影響を与える演技を見せており、ドラマ全体の雰囲気に多大に貢献しています。
すべての俳優たちのコラボレーション感が、最高に素敵なドラマでもあるのです。
『オザークへようこそ』シーズン2
個人的に2018年度にハマったドラマでもあり、筆者は本作を、2018年度に観た面白いドラマランキング第13位にランキングしました。(下記リンク参照)
https://kaigai-drama-board.com/posts/18336
一般人が麻薬カルテルの犯罪に巻き込まれるという感じが『ブレイキング・バッド』に似ていますが、マーティは資金洗浄をしているので、本人が犯罪という意識をあまり持っていないのがトラブルを呼び込んでいきます。
あくまでもビジネスといったテイで犯罪にハマる感じが、実は『ブレイキング・バッド』よりも恐ろしいのではないかと思えてきました。
特筆すべきは、犯罪ドラマの中で、女性たちがたくましくて魅力的なこと。
マーティの妻ウエンディは、かつて政治の世界にいただけに、笑顔で人を裏切れるタイプなのが恐ろしい。
地元の娘ルース役のジュリア・ガーナーも、幸せになりたい気持ちを持ちながらも、犯罪に引き戻されてしまう女性の悲劇性を見事に演じています。
『POSE』シーズン2
個人的にも、2019年にハマったドラマの一つです。
何よりもLGBTQの若者たちが作り上げたボール・カルチャーに衝撃を受けました。
文化というのは、必要に応じて必要な人たちによって作り上げられていくものなのだと思い知らされました。
さらに、LGBTQ文化を描く上で欠かせないのが、HIVの問題。
80年代、HIVはまだ謎の病気で、治療薬も今のように良いものが開発されておらず、HIVポジティブになった人々が次々と発症して亡くなっていきました。
多くの愛する人々を亡くしてきたLGBTQの人たちの悲しみ、憤りを感じさせるドラマにもなっています。
『succesion キング・オブ・メディア』シーズン1
シーズン1を鑑賞しましたが、第一話で登場人物の関係性を注意深く見極めることをお勧めします。
会話劇で物語が進行するので、関係性がはっきりしないまま視聴を進めると、誰がどの立場で話しているのか分からなくなり混乱してきます。一家の関係性も複雑なので、それも混乱する要因です。
登場人物は、まったく共感できない嫌味な人物ばかり。
それでも次男のケンダル(ジェレミー・ストロング)には、父親に愛されないという悲劇的な状況があり、長女のシヴ(サラ・スヌーク)は、優秀なのに女だから父親に信用されていないという逆境を抱えています。
個人的には、キーラン・カルキン(マコーレ・カルキンの弟)が演じる三男のローマンの傍若無人ぶりに度肝を抜かれました。
メディア王ローガンの甥にあたるグレッグ(ニコラス・ブラウン)の純粋な感覚だけが唯一の癒しです。
『ボディガードー守るべきものー』
『ボディガード -守るべきもの-』予告編 - Netflix [HD]
『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スターク役で人気の高い英国男優リチャード・マッデン主演。
相変わらずイケメンではありますが、今回はヒーローというよりPTSDを抱えた男の役柄なのが新鮮でした。
リチャード目当ての女子用の、セクシー部分もありつつも、きちんとしたサスペンスになっているので、なかなか見ごたえがあります。
テロと対決するロンドン市警の巡査部長をリチャードが演じるのですが、もしかしたら映画にしてもヒットしたかも?
と思うほど、ハラハラするシーンが続き、全6話イッキミしてしまいました。
シーズン2の製作がほぼ決定しているようですが、正式なアナウンスはまだです。
8月22日はチンチン電車の日。路面電車が印象的な映画『欲望という名の電車』
今週のお題「わたしと乗り物」
欲望という名の電車 オリジナル・ディレクターズカット [DVD]
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- 発売日: 2013/11/06
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本日は、東京で初めて路面電車(チンチン電車)が走った記念日(新橋〜品川)。
もはや、チンチン電車と言う人も少ないでしょうが、路面電車ってなんだかノスタルジーを感じます。
テネシー・ウィリアムズの戯曲を映画化した『欲望という名の電車』(1951)には、路面電車が印象的に登場します。
ニューオリンズの街で、欲望という名の路面電車に乗って、墓地行きに乗り換え、極楽で降りた女性ブランチ・デュボア(ヴィヴィアン・リー)が主人公。
白黒映像のなかで佇むヴィヴィアンが、切なくて儚くて、とんでもなく美しい。
彼女は、この時38歳で、現在であればまだまだ女盛りですが、当時は40女はもう女として扱われないという時代。
美貌を誇る女優として陰りが見え始めたヴィヴィアンと、お嬢様育ちで世間知らずの未亡人ぶっている主人公ブランチの境遇が重なり、とてつもなく切なく苦しい物語なのです。
この役をやれるのは私しかいない!という女優魂でブランチを演じたヴィヴィアン・リーの鬼気迫る演技は、みていて苦しくなるほどの迫力です。
本作で、アカデミー主演女優賞を受賞しています。
この映画のみどころをもう一つ。
ブランチを追い詰める粗野な男スタンリーを演じているのは、マーロン・ブランド。
マーロン・ブランドといえば『ゴッド・ファーザー』(1971)のでっぷりとしたコワモテおじさんを想像するかもしれませんが、本作のマーロンは、シュッとしたワイルドなハンサムなので、驚く人も多いと思います。
マーロンの眩しいほどの荒ぶる存在感に、ノックアウトされる映画でもあります。
ヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランドという二人の名優の、演技を超えた演技を、ぜひその目で見て体感してもらいたいと思います。
苦しいけれど、貴重な体験になるはずです。
A Streetcar Named Desire Official Trailer - Marlon Brando Movie (1951)
- 作者: テネシーウィリアムズ,Tennessee Williams,小田島雄志
- 出版社/メーカー: 新潮社
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A Streetcar Named Desire (Penguin Modern Classics) (English Edition)
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8月21日は、献血の日。映画『私の中のあなた』は、白血病の少女と共に生きる家族の物語
8月21日は献血の日。
おすすめしたい映画は、『私の中のあなた』(2009年 ニック・カサヴェテス監督)です。
白血病の姉ケイトのドナーとして生まれた妹のアナ。
「もう、姉の犠牲にはなりたくない」
彼女が、両親を相手に裁判を起こします。
アナの予想外の行動に憤る母親のサラ。
ケイトの白血病の治療を中心に回る家族の生活。
自分の存在価値を測りかねる兄のジェシー。
消防士の父親も多忙な中で家族を支える。
病気という敵を相手に戦う家族の物語です。
献血をしようと思ったら、ぜひ、ドナ―登録についても考えてみてください。
全国の献血ルームで登録できます。
私は、15年ほど前に登録して、約10年の間に2件連絡がきました。
一人の患者さんのために、数人のドナーに連絡が来るようで、結局、私はドナーには決定しませんでしたが、役に立てるのであればドナーになりたかったです。
現在は、持病のためドナーを卒業しています。
ちなみに、一緒に登録した夫には、一度も適合の連絡はきていません。
骨髄提供については、痛みなどリスクの怖さを感じる人も多いと思います。
それは、骨髄移植の情報が少なすぎて、どれほどの危険性なのかを理解しづらいからだと思うのです。
わたしも、適合連絡がきたときにDVDをもらい、手順などは理解できたのですが、
もっと具体的にドナーになった人の生の声を聴くことができれば、恐怖は解消できるのではないかと思いました。
今、病院では、どんなに簡単な手術や処置にもリスクの説明をしますが、リスクを説明したうえで、「たいていの人は大丈夫ですよ」と言ってもらった方が、決断しやすいとも思います。
決断するには、大丈夫な要素を知ったうえでリスクを理解することが一番大切だと思います。
もうすこし、周知できるような広報活動をしたらいいのになと思いました。
しかし、ドナー登録をすることで、救える命があると思えば、登録する意義があります。
白血病という病気を知るきっかけにするためにも、『私の中のあなた』はおススメです。
映画と原作本では、違う展開になるようです。
- 作者: ジョディピコー,Jodi Picoult,川副智子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09
- メディア: ペーパーバック
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リリー・ジェームズ主演映画『ガーンジー島の読書会の秘密』8月30日公開。読書会に憧れているわたしとポテトピールパイ
『ガーンジー島の読書会の秘密』
リリー・ジェームズ主演 マイク・ニューウェル監督
2019年8月30日公開
この映画、観たいなぁ。
好みのポイントをたくさん抑えられているんです。
まず、大好きなリリー・ジェームズ主演。
相手役は『ゲーム・オブ・スローンズ』で、カリーシの恋人だったマイケル・ユイスマン
シビル他、『ダウントン・アビー』のキャストも出演。
読書会という設定。
美しい島での物語。
作家の主人公が島を訪れる設定。(少しアガサ・クリスティっぽい)
映画チラシのリリーのコートとトランクが素敵♡
#ダウントン・アビー ファンのみなさま#リリー・ジェームズ 主演映画#ガーンジー島の読書会の秘密 には、
— 峯丸ともか (@blua_birdo) 2019年7月12日
シビル役のジェシカ・ブラウン・フィンドレイが出演しています。
イザベル役ペネロープ・ウィントンと
ヘンリー役のマシュー・グードも出演。
ダウントン率が高くてうれしい映画ですね pic.twitter.com/avZtj89ZZz
などなど、たくさんありますが、一番気に入ったのは、
読書とポテトピールパイの会
という読書会の名前です。
なんて、素敵な名前なんだ。
もし、自分が読書会をやることになったら、
この名前を真似しよう。
読書とレモネード、チーズケーキの会とかいいかも。
なんだか楽しそうな会になりそうでしょ?
実はこの名前、映画の原題にもなっています。
原題『The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society』
と、なるとポテトピールパイとはなんぞや?ということになりますね。
調べました。
ところが日本語のレシピはなかなか見つからずで…
英語の動画レシピはこちらです。
A Modern Guernsey Potato Peel Pie Recipe
どうやら、映画の舞台ガーンジー島の伝統的なパイのようです。
ポテトピールというのは、ジャガイモの皮という意味なのかも。
最初にジャガイモをスライスして、型に敷き詰め、マッシュポテトベースのフィリングをいれてオーブンで焼くようです。
ジャガイモ好きには見逃せないおいしそうなパイなので、今度作ってみようと思います。
これが読書とポテトピールパイのメンバー。
中央のおじさまが持っているのが、ポテトピールパイだと思われます。
イラスト映画鑑賞記『Girlガール』ビクトール・ポルスターの美しさにやられて作った「この人美しい」と思った俳優リスト
『Girlガール』2019年7月5日公開
ルーカス・ドン監督
映画boardの記事はこちら↓
ttps://eiga-board.com/posts/2644
今年に入ってからずっと楽しみにしていた『Girlガール』を観てきました。
主演のビクトール・ポルスターの美しさ、凄いです。
記憶に残る美しさでした。
そんなわけで、今まで観た映画の俳優さんの中で、「この人、ホントに美しい男だな」と思った方々を思い出してみます。
「かっこいいなぁ」と思ったのと同時に「美しいなぁ」と思った方々です。
普通に「イケメンだなぁ」と思った人は、もっとたくさんいます。
※思い出した順。映画名は、初めて彼らを美しいと思った映画。
①リヴァー・フェニックス『スタンド・バイミー』(1986)
②ヒュー・グラント『モーリス』(1987)
③ショーン・ビーン『チャタレイ夫人の恋人』(1993)TV映画
④キアヌ・リーヴス『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)
⑤アンドリュー・マッカーシー『レス・ザンゼロ』(1987)
⑥ロブ・ロウ『ホテル・ニューハンプシャー』(1991)
⑦カイル・マクラクラン『ツイン・ピークス』(1991)
⑧ブラッド・ピット『リック』(1988)
⑨ヒュー・ダンシー『いつか眠りにつく前に』(2007)
⑪ティモシー・シャラメ『君の名前で僕を呼んで』(2017)
⑫チャーリー・プラマー『荒野にて』(2017)
⑬ビクトール・ポルスター『Girlガール』(2018)
さらに思い出したら追加していきます。
『ア・ゴースト・ストーリー』ゴーストも「イイね!」ができるとしたら?死後の世界にも希望が持てる
正直、途中何度か「ながいな」と思った。
無音や長回しの連続で、ある種の「苦行」のような状態に陥っていた。
しかし、この苦行っぽさこそが、ゴーストの状態そのものなんじゃないか?
と鑑賞後に思った。
たしかに、シーツかぶりゴーストが佇んでいる姿は、楽しそうに見えない。
そして、この苦行を耐えながらも、私が映画を観続けたのは、ゴーストがラストどうなるのか見届けたかったから。
ラスト、予想外に納得できる答えを示されて驚いてしまった。
その後、無音のエンドクレジットを眺めながらヒシヒシと感じるあの余韻……
四角い画面構成とか、ヘンな音楽とか、いろいろやってる感は否めない(あまり必要とも思わなかった)し、わざとやってる感すら感じる。
が、なんだか惹きつけられてしまう不思議な雰囲気。
鑑賞後、帰宅する電車の中でも、「ゴーストとは結局どんな存在なのか?」と、思いを巡らせてしまった。
時間を超える存在。愛情を超える存在。ただそこにいるわけでもない。
単純な執着に繋ぎ止められている。
死とは、存在していたものが存在しなくなるというだけの話なのか。
逆にそう考えた方が、安心できるかも。
人間は、死を恐れすぎなんだな。
「あー面白かった」と思える映画でも、「何度でも見たい!」とも思える映画ではないが、生活に何とも言えない影響を与えてくるかんじ。
嫌いではない。
アメリカ人のデヴィッド・ロウリー監督の死生観は、カトリック的でもなく、東洋的でもない。
監督独特の死生観は、映画の中に登場するよくしゃべる脇アセ男のセリフの中に隠されているのかも。
ゴーストが「イイね!」的に、電球をジジジっとやっててそう思った。
とはいえ、かんじの悪い男がとりとめもなくしゃべっていたシーンなので、詳しくは覚えていない。
かといってもう一度映画館で見る勇気はない。プチ苦行はなかなかツラい。
監督のインタビューがあったので、死生観についてはこちらを参考に。
浄化という考え方は、ゴーストだけじゃなく、生きてる人間にもあてはまるかなと思った。
過去を浄化して、次のステップへ。
来年の目標にしようかな。
原題 A Ghost Story
製作年 2017年
デビッド・ロウリー監督
製作国 アメリカ
配給 パルコ
『くるみ割り人形と秘密の王国』ナッツクラッカーの決定版!になるはずが……
むかし、E・T・A・ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王様」が大好きな女の子がいました。
女の子は、クリスマスシーズンになると毎年、「くるみ割り人形」の絵本を読んだり、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」をyotubeで見たりしていました。
くるみ割り人形のおはなしは、世界中で愛されていて、たくさんのアニメや絵本になって販売されていました。
ところが、女の子が納得する「完璧!」とギュッと抱きしめたくなるような完全版のくるみ割り人形は、まだ世の中に作られていませんでした。
すると、2018年ディズニー製作の映画『くるみ割り人形と秘密の王国』が公開されました。
女の子は、ようやく「完璧!」な、くるみ割り人形のお話を見られるとワクワクして劇場にむかいました。
Tchaikovsky - The Nutcracker, Ballet in two acts | Mariinsky Theatre (HD 1080p)
ところが……
登場したのは、ホフマンの原作とはかけ離れた世界観のお話でした。
大好きなラッセ・ハレストレム監督持ち前のストーリーテリング能力がまったく生かされていませんでした。
ディズニー様は、CG神に頼りすぎていました。
お金をかけて豪華な秘密のCG王国を作りあげていたのは素晴らしいと思います。
ファンタジーな雰囲気は、たっぷり楽しむことができます。
クリスマスシーズンにピッタリの映画です。
しかし、雰囲気だけでは女の子は納得できませんでした。
ディズニー様の本来の使命は、世界中の子供たちが心から入り込める「おはなし」を創ることです。
もう一度、原点に帰ってお話づくりを見直してほしいと心から望みました。
ワクワクさせてくれるストーリーさえあれば、CG神の力はそんなに必要ないのです。
女の子は、映画館を出て、トボトボと家に帰りました。
そして、自分の持っているナッツクラッカーの飛び出す絵本を読み返しました。
実は、この絵本の絵にも心から納得しているわけではありません。
完璧なナッツクラッカー(くるみ割り人形)のおはなしを、いつか見てみたいという夢だけが残ってしまいました。
おしまい
原題:The Nutcracker and the Four Realms
2018年アメリカラッセ・ハルストレム、ジョー・ジョンストン監督
配給ディズニー
『チェコ・スワン』おばちゃんたちが雨の中で踊る「ど根性白鳥ダンス」は必見!
上映時間52分と短いが、十分楽しめた。
主人公のおばちゃんダンスチームの面々は、とにかくよく笑う。
ダンスをすること、気心の知れた仲間と過ごすこと。
こんなにも没頭して楽しめることがあるおばちゃんたちは、幸せだ。
マンネリ化した出し物に喝を入れるため、白鳥の湖を踊ることにしたおばちゃんダンスチーム。
なんと、国営バレエ団の演出家に「指導してもらえませんか?」と直談判。
バスに乗り込み押し掛ける。
おばちゃんたちの迫力に圧倒されつつ、「あなた方の度胸は素晴らしい。ダンスはプロだけのものではない。」と好意的。
しかし、なかなか厳しい演出家。
「どのくらい本気か見せてください」
とのことで、衣装に着替え、雨の降る中、屋外で白鳥のダンスを見せることに。
結構、雨降ってますよ。
それでも、楽しそうに笑顔で踊るおばちゃんたち。
ダンスを心から楽しむ精神が、演出家の心を動かす。
バレエ団で、主役に抜擢されたばかりの若きプリマ、マルケタが、おばちゃんたちを指導することになる。
映画的には、バレエ指導に訪れたマルケタとの対比がおもしろかった。
彼女は、真面目でオカタイタイプ。
技術的には素晴らしいが、踊に心の硬さが現れてしまう。
底抜けに明るいおばちゃんたちとの交流が、マルケタにとってもプラスになるにちがいない。
芸術って奥が深い。
マルケタの空気がピンと張り詰めるような美しい真の芸術のスワンも、
おばちゃんたちの、笑顔溢れるほのぼのスワンにも両方感動してしまう。
紙おむつのパンツがはみ出てても、最後の白鳥のダンスには涙がでた。
人を喜ばせたいという願望は、ありふれているようで実は、人間の営みの中で一番尊い精神であるような気さえした。
そしてその精神は、自ら楽しんで行動することにより強化される。
チェコの陽気なおばちゃんたちに、教えてもらった人生の教訓。
きっと、おばちゃんたちそれぞれの人生にもいろいろあるはず。
ドキュメンタリーだが、あえて個人の事情を掘り下げず、あくまでも「おばちゃんたち」というゆかいなコミュニティとして描いていくところが、映画をファンタジーのような雰囲気にしていく。
その辺を、監督が狙ってやっているのかは不明だが、果てしないほのぼの感と、さりげない感動が観る者の心をわしづかみにする。
彼女たちは、まちがいなく、人生を謳歌している。
おばちゃんたちのガハハハ笑いが
心地よく映画館に響いて、終始幸せな気分になった。
アレクサンドラ・テルピンスカ監督
なぜか無性に大杉漣さんに会いたくなって観に行った『教誨師』
暖かく人を包み込むような優しい声。
無性に大杉漣さんの声が聴きたくなり、映画『教誨師』を観に行った。
実際にお会いしたことはないのだが、とても親しみを感じる俳優さんだ。
大杉漣さんが亡くなったのは、2018年2月21日。66才だった。
わたしも含めて、漣さんの突然の死にショックを受けている人が多く、
改めて大杉漣さんが、映画関係者だけでなく、一般市民にも愛されている俳優なのだということを実感した。
なぜ、彼はここまで人々に愛されたのだろう。
大杉漣さんは、北野武監督映画に抜擢され有名俳優となるまで20年もの間、
俳優として地道に頑張ってきた人物だ。
一口に20年と言っても、一人の男の20年ともなると結構な重みがある。
20年もの間、俳優を仕事として一本立ちする。
という夢を追いかけ努力を続けるというのは、それだけで才能だと思う。
彼の才能を信じて支えてきた奥様との関係性も素敵だ。
大杉漣さんは、自身の経験からも「頑張っているけど、なかなか世に出ていない人物」
をサポートしたいという気持ちがあったのではないかと推測する。
無名監督の映画に出演したり、時には学生映画にも出演したりもしていた。
見返りはギャラではないだろう。
人知れず頑張っている人を応援するという意味では、映画を制作し、教誨師という職業を知らしめることもサポートの一環だと思う。
教誨師とは、刑務所の受刑者と面談し、対話で更生を促す人物のことで、
日本では、主に仏教の僧侶がボランティアで務めているとのこと。
今回の映画で初めて教誨師という存在を知った人は多い。
映画では大杉漣さんは、プロテスタントの牧師という設定になっている。
とても人間味のある牧師さんで、宗教家っぽくないところが好感が持てる。
大杉漣さんに会いたくなって観に行った映画だったが、意外なことに死刑について考えさせられる映画であった。
2018年は、オウム真理教の死刑囚13人の死刑執行が行われた年でもあり、
死刑について(その実行の仕方など)広く周知されることになった年でもある。
同じタイミグで死刑について問う映画が公開されるというのも、めぐり合わせのようなものを感じた。
映画内にも、死刑執行の日の様子が描かれる場面がある。
死刑を見届ける教誨師や刑務所の職員たちの雰囲気を映し出している印象的なシーンだった。
もう一つ触れておきたいのは、佐向大監督の脚本力の強さについて。
ほぼ対話だけでストーリーが進む展開で、飽きさせない脚本力には驚いた。
私なんぞが言うのはおこがましいが、十分に魅せる対話劇だった。
その脚本を演じる俳優たちの演技にも引き込まれた。
『教誨師』に登場するキャストは、一般的に無名の俳優が多い。
しかしながら、バラエティに富み味わい深い役者ばかりだった。
人知れずいい演技をしている俳優は多いが、彼らにスポットライトが当たることはあまりない。
大杉漣さんが主役になることで、彼らの演技も世に出ることができるのだ。
漣さんのサポート力は、計り知れない。
大杉漣さんが愛されたのは、人の才能に敏感だったところに理由があるような気がする。
どんな人物にも、その人なりの魅力がある。
埋もれて世に出ていないからといって才能がないわけじゃない。
その人の良い部分に目を向けられる人物は、人を向上させ、その人の周りを向上させる。
大杉漣さんは、もういない。
映画界全体の向上のためにも、第2、第3の大杉漣が現れてほしい。
アイドルを起用してもいい、無名の俳優でもいいから、
作り手の気持ちを感じる映画を、わたしは観たい。
大杉漣さんには、「気持ち」を感じさせる何かがある。
これは、演技のうまい下手を超越した、人間としての存在感のようなものだろうか。
良心というと固くなりすぎるかもしれないが、大杉漣という存在に感じる温かみのようなものに、わたしたちは包まれたいのかもしれない。
2018年日本
佐向大監督