峯丸ともかの映画&ドラマ手帳

映画レビュー&ドラマレビュー、執筆した記事などアップしていきます。

今年見た映画をレビューしていきたいのですが、全部は無理かも。とりあえず最新映画で気になったものを更新していきます。あとは、おいおいで!

『マイ・プレシャス・リスト』女性監督が描く若い女子がほんわかとして心地よい

お題「最近見た映画」

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主人公キャリー・ピルビーを見ていて自分の20歳のころを思い出した。
大人になりたいけど、なりたくないし、
ならなきゃいけないのわかってるけど、どーしたらいいのか分からない。
それでいいんだよね。


1日で成長して急に大人になれるワケがないもん。


少しづつ経験して、恥かいて、徐々に大人になればいいんだよ。
って20歳の自分に言ってあげたくなった。


映画『マイ・プレシャス・リスト』主演ベル・パウリー コメント付き本予告

 

女性監督スーザン・ジョンソンが描く、若い女子のほんわかとした心地よさ。
主演のべル・パウリーのポカン顔も好き♡
脚本はドラマ『ギルモア・ガールズ』も書いてたカーラ・ホールデンってことで、笑いの要素も好みだった。

カフェでイケメンが近づいてきて、ナンパかと思ったら「イスいいですか?」とか(笑)

このシーンを、映画館の隣の席の老婦人がウケてて、なんかほっこり☺

 

キャリーは、IQ185で、ハーバード大学飛び級卒業の頭脳の持ち主だけど、

一番お気に入りの本は、「フラニーとゾーイ」(サリンジャー)というのが親近感がわく。

アメリカではいまだにサリンジャーって、若者のバイブルなんですね。

 

キャリーのリスト↓

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キャスティングしたのは、プロデューサーか、監督か分からないけど、

とってもセンスある配役!

特に男性キャストがみんな魅力的♡

 

キャリーとイイ感じになるお隣さんは、『ナルニア国物語』のピーター役ウィリアム・モーズリー

正装した姿もいいけど、路上で長い笛(ディジュリドゥを吹いてたヒッピーっぽい姿にやられました♡

大学教授はコリン・オドナヒュー。

ドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』フック役の彼です。

ドラマとずいぶん印象が違うので気が付かなかった!

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ちなみに、この映画のチラシとってもカワイイです。

このチラシを見て、映画を観にいこうと決めました。

キャリーの服装や、部屋のインテリアなんかもセンスよくて、ストーリー以外にもそういうトータルパッケージがすべて好みだと、映画を見た後幸せな気分になりますね。

 

他の女子のみなさんと同様、年末までのプレシャスリストも手帳に書いちゃいます。

きっと。

とりあえず、キャリーのかぶってた白いニット帽っぽいやつ
今年の冬、買います👒

my-precious-list.jp

原題Carie pilby

スーザン・ジョンソン監督 アメリカ2016年

『華氏119』自由の国アメリカは、なぜ自由な人物トランプ大統領を選んだのか

お題「最近見た映画」

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忘れもしない2016年11月9日、

ネットニュースを見て衝撃を受けた。
『トランプ氏、アメリカ大統領に決定!』
………
「は?……えー!ヒラリー何してんの?……アメリカ人だいじょうぶ???」

だいじょうぶじゃなかった……
トランプは、突然降って沸いたわけじゃない。
この言葉は結構重い。

トランプが大統領になってしまった原因を探る映画だが、
残念ながら、これという決定的理由は描かれていなかった。


しいて言えば、アメリカは自由すぎて混乱しているのかもしれない。


トランプだけじゃない、ヒラリーもオバマ民主党共和党も、政治関係みんなダメじゃん!!!


バーニー・サンダースの件と、フリント市の水道の件は戦慄さえ覚える。


【公式】『華氏119』本予告 11.2公開


しかし、ムーア氏、今回はずいぶんとお上品で、日本の池上某氏のような雰囲気になっていた。
だから強気にみせるため、水巻いたりしてみたのだろうか?

マイケル・ムーア視点での解釈だが、
今のアメリカの状況を知る上で十分参考になる。

 

混乱だらけのアメリカ。

2018年2月また銃乱射事件がおきた。被害者のフロリダの高校生たちは、たくましく頑張っている。

マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件 - Wikipedia

ネット社会を味方に腐敗した政治と対抗できるかもしれない。

彼らのような若者世代が希望でもある。

しかし、ネット社会というものも、もろ刃の剣のようなものだし……

 

 

ボウリング・フォー・コロンバイン [Blu-ray]

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コロンバイン高校銃乱射事件が起きたのは、1999年。

なにも変わっていなさすぎる

アメリカ大丈夫????

という気分になった。

 

今年のトニー賞授賞式でのこと。

プレゼンターとして登場した名優ロバート・デニーロが、開口一番「フ〇〇ク、トランプ!」と叫んでいた……

 

こういうところはホントにスゴイと思う。

名優が公共の場で自国の大統領を「フ〇〇ク!」と叫べる自由度があるというのは素晴らしいことだ。

 

しかし、最近デニーロ氏の事務所に爆弾が置かれていたとか……

この件と関係あるのだろうか……


Robert de Niro's 'Fuck Trump' speech at Tony awards


「自由の国アメリカ」

という言葉には根拠があった。

 

ニューヨークにある自由の女神の台座にはエマ・ラザロの詩が刻まれている。

 

自由の女神像 (ニューヨーク) - Wikipedia

『華氏119』でもラストの方で、年配の方が涙ぐみながらこの詩を紹介している。

女神の持っているトーチの炎は、

「ここに自由の国への入り口がありますよ」

という目印で、女神は入り口の扉をトーチの炎でかざしているのだそうだ。

 

そういう意味があったのかと初めて知り、感動を覚えた。

その昔、世界各国から船に乗り、ニューヨークに辿り着いたとき、あの女神を見た人たちは希望に心震えたことだろう。

 

自由とは、尊いもの。そして残酷なもの。誰にでも権利があるが、自我の強い人間でなければ生き残っていけないサバイバル社会だ。

 

自由すぎても混乱が起こってしまうのかもしれない。

いろんな意味で「自由」

という言葉の象徴のような人物であり、エゴの塊であるドナルド・トランプ氏が、大統領になってしまう国でもあるのだから。

 

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自由の女神の台座に刻まれていることば~

"Keep, ancient lands, your storied pomp!" cries she
With silent lips. "Give me your tired, your poor,
Your huddled masses yearning to breathe free,
The wretched refuse of your teeming shore.
Send these, the homeless, tempest-tost to me,
I lift my lamp beside the golden door!"

Emma Lazarus - Wikipedia

 

疲れ果てたものよ

貧しいものよ
拒否されたものよ

祖国を無くし、混乱のさなかにいるものよ

ここに集え!

自由の国への入り口はここ、

わたしが照らすこの明かりの元にある!

(峯丸ともか訳)

gaga.ne.jp

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題:Fahrenheit 11/9

マイケル・ムーア監督

2018年アメリ

 

『運命は踊る』を観て、踊らされて帰ってきました。

 

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運命という言葉は、あまり好きではない。

世の中、運命によって操られているとは思えないし、思いたくはない。

 

だから、この『運命は踊る』という日本語版のタイトルを見たときに、

「これは、運命だ!ジャジャジャジャーン!(BGM第9)」

というかんじで、悲劇的に押し続けるオカタイ映画なのかなぁ?と思ってしまった。

 そうなると、あまり興味は惹かれない。

「評判が良いけど、見に行くのどうしようか?」と悩んだ時に、出会ったのが

この予告編。


『運命は踊る』予告編

 

皮肉なことに、この予告編に「運命的出会い」のようなものを感じてしまった。

イスラエル。戦争。息子の戦死。

重苦しい雰囲気のストーリの中で、突如のラクダと兵士のダンス……

♪(BGMエルマンボ)💃「ウー♪」

っていうのは、どういうことなのか?

早速、映画を観に行った。

 

やられた……

 

タイトル通り、「運命」が「踊って」いる!

しかも、その踊り具合がとってもブラボー!

 

この映画には、ストーリーテラーがいない。

カメラの構図、インテリア、小道具、絵画、イラストやアニメ、音楽そして、

役者の演技など、さまざまな手法で物語が饒舌に進んでいく。

  

そして、衝撃のラスト。

あんなふうに終わるとは思わなかった

と、観客も踊らされる。

 

この監督、天才かも!

サミュエル・マオズ監督。

 

moviche.com

 

イスラエルという国の、歴史背景や紛争の経緯などは、

複雑で、取っつきにくい話題ではある。

高校の世界史の教科書に載っているくらいの情報では、まったく理解できない。

 

こんな私のような、のほほんとした日本人のために、現実としての紛争を映画で表現してくれている。

しかも、サスペンスであり、コメディでもあり、ヒューマンでもあり、エンターテイメントでもある。

 

「戦争は悲劇なんだぁ!」という押し付け感が一切ないのに、「戦争ヤバイ」と思わせる恐怖感も感じられる。

 

映画を見た後、思わずイスラエルについてググってしまった。

なるほど、イスラエルには、女子にも兵役がある……。

しかし、難しい。

アレクサンダー大王にまで遡るのか……

この辺は、某池上無双先生のTV特番を待つとして、とにかく地図を見た。

イスラエルの位置確認だけでもしておくと、映画の内容がさらに入って来やすい。

 

イスラエル建国の経緯を含めた高校までの世界史知識と、地図上の位置確認、キリスト教ユダヤ教イスラム教についての微かな知識。

こんなもんでは、とうてい世界には出ていけないが、とりあえず中東を題材にした映画を観る際の大前提にはなるだろうか。

 

他の映画も観て、もっと理解を深めたいと思った。

まずは、サミュエル・マオズ監督の過去作「レバノン」(2009)から観ます。

レバノン [DVD]

レバノン [DVD]

 

 2018年9月29日日本公開

原題「FOXTROT」サミュエル・マオズ監督

フランス、ドイツ、イスラエル

 

www.bitters.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 

『死霊館のシスター』脅かされる大好き!というお化け屋敷好きさんは、映画館にGO!

お題「最近見た映画」

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ちょっと~

めっちゃ怖かったんですけど……

「わっ!」とか、脅かされるの大嫌いなんで……

 

アナベル~死霊人形の誕生』を自宅で鑑賞し、アナベルの顔にハマったので、

続編ポイし見に行くか~

と気軽に映画館で観てしまいました。

侮ってました……今の映画館は、音も良くて臨場感あおりまくりです!

 

この映画、アメリカでは、かなり評価低いです。

IMDBというインターネットムービーデータベースでの評価は、5.8なのでかなり低め。

最高10点で、非常に面白くて8.0以上、かなり面白くて7点代、普通に面白くて6点代なので、5点代というのは、ほぼツマンナイレベルに該当しちゃいます。

 

日本の映画評論サイトfilmarksでは5点満点の3.5という評価。

filmarksは、評価が高めに出る傾向があるので、3.5というのも少し低い部類に入るかも。

 

わたし、おもしろかったです……

 

たしかに、みなさんレビューでおっしゃるように、「志村~うしろ!」的に、脅かされるタイミングはわかりやすい。

でも、わざと3拍ぐらいズラしてみるところが、「ああ、もう、くるくる!」的に恐怖感をあおり、ビビりには余計にビビらされるポイントとなっていました。

 

それに、あのお城みたいな修道院の雰囲気が、恐ろしくて……

映画の冒頭、神父(ダミアン・ビチル)とアイリーン(タイッサ・ファーミガ)が、ルーマニアについた時点から「もう調査とかいいから早く帰りなよ」って思ってました。

 

ヴァラク(悪魔が乗り移った修道女)の顔も、アナベルより全然笑えないし、

とにかく侮って観に行って、ボッコボコにヤラれて帰ってきました。

 

だから、逆に映画にストーリーの重厚さとかを求めない人や、

脅かされるの大好き!という人には、お化け屋敷のノリでめちゃくちゃ楽しめる映画です。

 

わたしは、ビビって2Dで観ましたが、

風ビュッ、椅子ガタガタッと、さらに恐怖をあおってくれる4DX上映なら、

「ひゃっほ~い!」っていうくらい楽しめると思います。

 

あ、それから、↓下に貼ってある予告編ですが、

「怖すぎる!」と苦情が殺到し、youtubeでCM禁止となってしまった

いわくつきの予告編なので、視聴の際はご注意ください!


映画『死霊館のシスター』本予告【HD】2018年9月21日(金)公開

 

2018年アメリカ 原題『The Nun』

コリン・ハーディ監督

 

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

 

 

 

 

『ブレスしあわせの呼吸』実話ベースの映画が放つメッセージをダイレクトキャッチ!

お題「最近見た映画」

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映画「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するゴラムのモーションアクターアンディ・サーキス初監督作。

 

結婚し、子供が生まれるという人生で一番幸せともいえる時に、ポリオが発症。

28才という若さで首から下が動かず、人口呼吸器がないとブレス(息)すらできない
状態になってしまったロビン(アンドリュー・ガーフィールド)。

 

病院暮らしは、ほんとに気が滅入るもので、ましてや「一生寝たきりです」と宣告されたとあれば、死を考えてしまうのも当然というもの。

長期入院した経験のある人なら分かるこの絶望感。

人間、生きていくために、「希望」が必要なんですね。

 

妻のダイアナ(クレア・フォイ)の説得を受け、生きる選択をしたロビン。

ダイアナもこの時まだ25才。

子供を産んだばかりで、夫を支え、元気づけ、介護をしなければならない。

妻にとっても過酷な状況。

それでも、「あなたの命は、私の命」と言い切れますか?

自分も同じようにできるか問いかけてみた。

 

印象的だったのは、医者の猛反対を押し切り、自宅に戻るシーン。

呼吸器が2分外れたら死ぬ。

という過酷な状況である。

それでも、

担架で運ばれる時に見た青空がさわやかで、思わず笑顔になるロビン。

病院での生活から解放された喜びを感じた。

死ぬかもしれないけど、やってみる価値はある。

入院経験がある者として、気持ちわかります。

 

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主人公ロビンとダイアナのモデルは、映画「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのプロデューサー、ジョナサン・カヴェンデイッシュ氏のご両親とのこと。

 

実話ベースで難病と闘う夫婦を描いた「ロレンツォのオイル/命の詩」(1992年)という映画がある。

「医師たちに見放されてもなんとか改善してみせる!」と全力を尽くす素人の執念を描いているのが、この2作の共通点です。

 

結果的に彼らの試みは、同じ病気を抱える人たちの希望となるものを残して、実際に役立っているのだから、「希望」を侮ってはいけないなぁと思う。

 

 

ロレンツォのオイル/命の詩 [DVD]

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 実話だからこそ、ダイレクトに飛び込んでくるメッセージを、しっかり受け止めたいと感じた。

ポリオという恐ろしい病気のこと。

ハンディキャップのある人が、社会に参加するためにはどうしたらよいか考えること。

夫婦の在り方について。

尊厳死という選択について。

 

そんなメッセージをかみしめながらも、映画のラスト、エンドロールの映像に驚いた。

実際のカヴェンデイッシュ氏の古いフィルム映像が流れてきて、

本物のロビンは、とてつもない満面の笑顔を見せていた。

 

「ただ呼吸するだけでなく、人間らしく生きたい」

 

28才で余命三か月と宣告されてから、64才で亡くなるまで、36年間。

人工呼吸器で息をしながら人間らしく生き抜いたロビンの笑顔。

キラキラに輝いていた。

 


9/7公開『ブレス しあわせの呼吸』予告編

 

2017年イギリス

アンディ・サーキス監督

 

breath-movie.jp

 

 

 

『西北西』なぜこの映画がヒットしないのか意味が分からない

お題「最近見た映画」

 

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スゴイ映画に出会った。

詩的に真摯に東京に住む女性たちの葛藤を描いている。

 

西北西……それは、東京からメッカへの方角。

 

「そこまで信じられることがあっていいよね。」


メッカに向かい祈りを捧げるナイマに対して、ケイがいう言葉に共感した。


心の底から信じられるコトがある人って、どのくらいいるのだろうか?


少なくとも20代のころ、わたしには信じられるものが何一つなかった。
自分自身のことも信じることができなかった。


あの頃の、もどかしさ、苦しさ、生きづらさが映画鑑賞中に蘇ってきた。
でも、なぜか嫌な気持ちはせず、少し懐かしかった。


『西北西』に登場する3人の女性。
ケイ(韓英恵)、ナイマ(サヘル・ローズ)、アイ(山内優花)には共通点がある。


心の中に怒りを抱えながら生きているのだ。


ケイは、ルールを強要する日本社会に対して、ナイマは、融通の利かない公共施設に対して、
そして、アイは、愛情表現をしてくれない恋人ケイに対して怒りを感じている。


怒りを抱えながら生きていくのは、ケッコウツライ。
何かと戦って生きなければならないから、精神的に消耗してしまう。
そしてそれは、ほぼ勝ち目のない戦いなんだけど……若い時はそれに気が付かない。


日本の社会って寛容なようで寛容じゃないし、寛容じゃないようで寛容なんだ。
……ややこしい、曖昧な世界です。

 

20代のころを思い返すと、わたしは、ケイでありナイマであり、アイちゃんだった。
心の中にいつも怒りを抱えていた。
3人のそれぞれの気持ちがよく分かる。


中でも、センシティブに思考しながらも、おバカ風に武装しながら生きているアイちゃんに
一番共感した。
一生懸命生きるって、ああいうことだ。


わたしは、LGBTでもないし(多分…)、身体的なハンディキャップもない。
だけど、自分はマイノリティだと思い知らされながら生きてきた。
なぜなのか分からなくて、もがいた時期もあったが、ふとこの映画の中に答えを見つけてしまった。


わたしは「まともな人」側の人間じゃないからだ。
社会の中には、「まともな人」側の人間の数が圧倒的に多い。
特に会社という組織は「まともな人」側の人材で作られている。


どうりで、自分なりの正義感で戦っても勝てないわけだ。
だって正義の定義が違うから、始めから戦う土俵が間違っていたのだ。


カフェでナイマにイチャモンつけてきた男性側にも正義がある。
どちらが正しいかといえばどちらも正しい。
善悪では判断できない。
「まともな人」側の人、それ以外の人の両方の価値観で、日本の社会はできているから。


そういった日本社会に対する、ゆるやかな反逆を感じて心地よかった。
鑑賞後には、良質の小説を読んだあとのような、独特の余韻を感じさせた。


もうひとつだけ。

時々、絵画的に美しいシーンがあって驚いた。

一番気に入ったのは、

アパートのキッチンでブルーインコとサヘル・ローズがもぐもぐとモノを食べるシーン。


あのシーンは切り取って壁に貼っておきたいほど美しかった!
もし、フェルメールが生きていたらサヘルとインコをモデルに絵を描いたに違いない。

 

邦画を観るのは、今年2作目。
期待以上に良い映画で、戸惑ってしまったほどだ。

カメラを止めるな!』があんなにヒットして、

この素晴らしい映画『西北西』が、なぜヒットしないのか?

なぜだろう。


映画『西北西』予告編


2018年日本
中村拓朗監督

seihokusei.com

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「スリービルボード」看板・怒り・フランシス・マクドーマンド=タイマン勝負

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お題「最近見た映画」

田舎には、謎のデカイ看板があるものだ。

突然立った3つの看板が田舎町にもたらす波紋。

とても演劇的なテーマの設定の仕方に興味を惹かれ観に行った。

 

主人公のミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、とにかく終始怒っている。

 

自分に対してなのか、警察に対してなのか、もはや本人にも分からない。

それだけ彼女が今、不幸のドン底にいるということ。

 

彼女の怒りに共感しかけていると……

 

警察官ディクソン(サム・ロックウェル)の理不尽な怒りが横入りしてくる。

怒りの交錯って、かなり圧がスゴイんじゃ。

 

さらには、怒ってるわけじゃないのに顔が怒ってるコワモテ署長ウッディ・ハレルソンの

顔圧もスゴくて、もはや怒りのミルフィーユ状態。

 

こんなにも怒りという感情が隠されている映画だとは思わなかった。

ここまで来たら、どこまで怒りを暴走させ続けられるかという実験になってしまう。

というときに起こるあの署長の決断。

顔、あんなにコワイのに、イイヤツやんけ。

 

見事としかいいようのない演出と脚本力。

さらには、怪演という言葉がぴったりの演技を見せた主演の3人の役者力に圧倒される。

 

前と悪だけで世の中かたずけられたらラクだろう。

しかし、実際の世の中には善悪だけではない、さまざまな感情が溢れている。

 

映画のラストシーン、納得と不納得の感情が押し寄せてきて心をかき乱された。

味わったことのない後味だった。

シリアスなテーマなのに、ふざけてんのか何なのか、なぜか笑える。
今までの映画にはないタイプの、どんでん返しが待ち受けている。

 

感情でぶつかってくるので、鹿の暗示とかコツコツ考えずに、感情で受けて立ったほうがよい。

たまには、タイマン勝負もしてみるものだ。

それにしても、フランシス・マクドーマンドかっこよすぎでしょ!

 

 #映画好きなら見るべき映画

第90回アカデミー賞

主演女優賞フランシス・マクドーマンド助演男優賞サム・ロックウェル受賞


 原題  (2017)

マーティン・マクドナー監督

日本公開2018年2月1日 

デヴィッド・リンチ:アートライフ

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お題「最近見た映画」

2016年アメリカ ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム監督
 
人のアトリエを見るのが好きだ。
アトリエには、アーティストの頭の中が反映されていると思う。
デヴィッド・リンチのアトリエの映像があると知り、映画を観に行った。
.
リンチのアトリエは、廃工場の倉庫のような広い空間で、とてつもなく殺風景な空間だった。
打ちっ放しのコンクリ壁に錆びた鉄の机。使い古したソファーに座りごこちの悪そうな椅子。
そして、まったく音がしない。
そんな無音の殺伐とした空間で創作する骸骨のオブジェ。さらには、内臓が飛び出たり、首がぶっ飛んだ人間を
モチーフにした作品。
不思議なことにどの作品も、グロテスクなのにどこか可愛らしさがある。
映画やドラマのみならず、アート作品にもリンチならではの二面性が現れている。
 
ツイン・ピークス」を見る限り、デヴィッド・リンチという人は、さぞかし荒れた少年時代を過ごして
鬱屈とした感情を育み、異質の感覚を持つ大人になっていったに違いないと思っていた。
.
ところが、本映画で明かされる彼の少年時代は、いたって普通。
普通どころか、うらやましいほど幸せな家族に恵まれた子供時代は、古き良きアメリカの理想像そのもの。
まるでノーマン・ロックウェルのイラストのように爽やかじゃないか。
.
では一体、リンチの映画やアートに現れる光と闇の二面性とはいったいどこから湧いて出てきたのだろう?
リンチは映画の中でこんなふうに語っている。
.
「自分の中にあるものを表現しようとしたら、自分の過去でコーティングしなければならない。」
.
幸せな子供時代の中にも、闇が差し込む瞬間がある。
リンチほどの鋭い感覚の持ち主なら、光の中に差し込む一瞬の闇こそが衝撃であり、
生涯忘れえぬ程のトラウマとなるのだと思う。
幸せであればあるほど、闇は怖くなるものだ。
.
映画の中では、リンチが体験した少年時代のあるエピソードが語られている。
幸せな日常の中の一瞬の闇の衝撃。
それを目にした時、彼は明らかに闇に惹かれていた。
映画監督とかプロデューサーとかいう肩書はあっても、デヴィッド・リンチは、闇と光のはざまで作品を生み出すアーティストなんだと思う。
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この映画を観たものだけが、彼の創作意欲の根本を知ることができる。
クリエイティブなことをしたいと思っている人は、ぜひとも見るべき映画である。

5パーセントの奇跡

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お題「最近見た映画」

 ★★★2017年 ドイツ映画 マルク・ローテムント監督
.
視力が5%しかないとは、どんな感じなのだろう?
と興味を持って観に行った。
レディースディのせいか平日なのに客席はほぼ満席。
みんな感動もの好きなのね。
.
映画内で表現された5パーセントの視力とは、恐ろしく曇ったガラス越しに
景色や人を見ているようなもの。
ぼんやりと何かあるなとは感じるけど、誰なのか何なのかまったく分からない。
.
そんな状態でホテルマンとして働こうなんて無謀すぎる。
「3番テーブルに運んで!」と言われても、目では確認できず、
「左に15歩右に5歩」という感覚でワインや飲み物を運ばなければならないのだ。
「がんばればどうにかなる!」というレベルの問題じゃない。
それをやってのけてしまう主人公のサリヤ(コスティア・ウルマン)の情熱には心を動かされた。
.
しかもこの話、実話だというのだからまさにアンビリーバボー。
実物のサリヤは、15年間も視力のことを隠していたそうで、実話の方がよっぽどすごい。
スゴイ実話を映画化するのは、どうしたって映画の方が見劣りしてしまうが、
マルク・ローテムント監督の演出は、まったく退屈する部分がなかった。
さらに、主演のコスティア・ウルマンを知るきっかけになって儲けものの映画だ。
ドイツ人とインド人のハーフという異色のハンサムさん。
今後、もっとメジャー作に出て人気がでる可能性もある素敵な俳優です。
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明るく前向きな気持ちになりたい人、仕事への取組み方に悩んでいる人にはおすすめします。

 

キングスマン ゴールデン・サークル

お題「最近見た映画」

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★★★★
2018年1月5日公開 マシュー・ヴォーン監督

Manners makes the man.
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英国紳士という言葉の響きに弱い女子は多い。
さらに、スパイという謎めいた職業も興味をそそる。
老舗紳士服店の地下に、スパイ組織があるというアイデア、いいよね。
高級スーツに身を包んだ英国紳士スパイのキングスマンたち。
感じのいいハンサム顔のタロン・エガートン。ちょっとベビーフェイスっぽいところが女子の心をくすぐるよね。
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2作目の今回は、キングスマンの兄弟組織ステイツマンが登場。
アメリカのスパイ組織は、ケンタッキー州のバーボン蒸留所に秘密基地がある。
エージェントネームは、シャンパン・テキーラ・ウィスキーと単純なのが笑える。
キングスマンは、円卓の騎士の名前でとってもスパイっぽいのにね。
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というわけで今回の敵は、アメリカ人。麻薬王は女性というのもアメリカっぽい。
麻薬王ポピーのアジトは、「アメリカン・グラフィティ」に出てきそうなダイナー。
アメリカンダイナーって、どうしてこうもワクワクするんだろう。
ド派手な装飾とカラフルな照明のせいかな。

お正月にピッタリのお祭り映画でとっても楽しめた。
もう一本観たいな。第3作目希望。
次は、何メンにしますかね?