『チェコ・スワン』おばちゃんたちが雨の中で踊る「ど根性白鳥ダンス」は必見!
上映時間52分と短いが、十分楽しめた。
主人公のおばちゃんダンスチームの面々は、とにかくよく笑う。
ダンスをすること、気心の知れた仲間と過ごすこと。
こんなにも没頭して楽しめることがあるおばちゃんたちは、幸せだ。
マンネリ化した出し物に喝を入れるため、白鳥の湖を踊ることにしたおばちゃんダンスチーム。
なんと、国営バレエ団の演出家に「指導してもらえませんか?」と直談判。
バスに乗り込み押し掛ける。
おばちゃんたちの迫力に圧倒されつつ、「あなた方の度胸は素晴らしい。ダンスはプロだけのものではない。」と好意的。
しかし、なかなか厳しい演出家。
「どのくらい本気か見せてください」
とのことで、衣装に着替え、雨の降る中、屋外で白鳥のダンスを見せることに。
結構、雨降ってますよ。
それでも、楽しそうに笑顔で踊るおばちゃんたち。
ダンスを心から楽しむ精神が、演出家の心を動かす。
バレエ団で、主役に抜擢されたばかりの若きプリマ、マルケタが、おばちゃんたちを指導することになる。
映画的には、バレエ指導に訪れたマルケタとの対比がおもしろかった。
彼女は、真面目でオカタイタイプ。
技術的には素晴らしいが、踊に心の硬さが現れてしまう。
底抜けに明るいおばちゃんたちとの交流が、マルケタにとってもプラスになるにちがいない。
芸術って奥が深い。
マルケタの空気がピンと張り詰めるような美しい真の芸術のスワンも、
おばちゃんたちの、笑顔溢れるほのぼのスワンにも両方感動してしまう。
紙おむつのパンツがはみ出てても、最後の白鳥のダンスには涙がでた。
人を喜ばせたいという願望は、ありふれているようで実は、人間の営みの中で一番尊い精神であるような気さえした。
そしてその精神は、自ら楽しんで行動することにより強化される。
チェコの陽気なおばちゃんたちに、教えてもらった人生の教訓。
きっと、おばちゃんたちそれぞれの人生にもいろいろあるはず。
ドキュメンタリーだが、あえて個人の事情を掘り下げず、あくまでも「おばちゃんたち」というゆかいなコミュニティとして描いていくところが、映画をファンタジーのような雰囲気にしていく。
その辺を、監督が狙ってやっているのかは不明だが、果てしないほのぼの感と、さりげない感動が観る者の心をわしづかみにする。
彼女たちは、まちがいなく、人生を謳歌している。
おばちゃんたちのガハハハ笑いが
心地よく映画館に響いて、終始幸せな気分になった。
アレクサンドラ・テルピンスカ監督