『ブレスしあわせの呼吸』実話ベースの映画が放つメッセージをダイレクトキャッチ!
映画「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するゴラムのモーションアクター、アンディ・サーキス初監督作。
結婚し、子供が生まれるという人生で一番幸せともいえる時に、ポリオが発症。
28才という若さで首から下が動かず、人口呼吸器がないとブレス(息)すらできない
状態になってしまったロビン(アンドリュー・ガーフィールド)。
病院暮らしは、ほんとに気が滅入るもので、ましてや「一生寝たきりです」と宣告されたとあれば、死を考えてしまうのも当然というもの。
長期入院した経験のある人なら分かるこの絶望感。
人間、生きていくために、「希望」が必要なんですね。
妻のダイアナ(クレア・フォイ)の説得を受け、生きる選択をしたロビン。
ダイアナもこの時まだ25才。
子供を産んだばかりで、夫を支え、元気づけ、介護をしなければならない。
妻にとっても過酷な状況。
それでも、「あなたの命は、私の命」と言い切れますか?
自分も同じようにできるか問いかけてみた。
印象的だったのは、医者の猛反対を押し切り、自宅に戻るシーン。
呼吸器が2分外れたら死ぬ。
という過酷な状況である。
それでも、
担架で運ばれる時に見た青空がさわやかで、思わず笑顔になるロビン。
病院での生活から解放された喜びを感じた。
死ぬかもしれないけど、やってみる価値はある。
入院経験がある者として、気持ちわかります。
主人公ロビンとダイアナのモデルは、映画「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのプロデューサー、ジョナサン・カヴェンデイッシュ氏のご両親とのこと。
実話ベースで難病と闘う夫婦を描いた「ロレンツォのオイル/命の詩」(1992年)という映画がある。
「医師たちに見放されてもなんとか改善してみせる!」と全力を尽くす素人の執念を描いているのが、この2作の共通点です。
結果的に彼らの試みは、同じ病気を抱える人たちの希望となるものを残して、実際に役立っているのだから、「希望」を侮ってはいけないなぁと思う。
実話だからこそ、ダイレクトに飛び込んでくるメッセージを、しっかり受け止めたいと感じた。
ポリオという恐ろしい病気のこと。
ハンディキャップのある人が、社会に参加するためにはどうしたらよいか考えること。
夫婦の在り方について。
尊厳死という選択について。
そんなメッセージをかみしめながらも、映画のラスト、エンドロールの映像に驚いた。
実際のカヴェンデイッシュ氏の古いフィルム映像が流れてきて、
本物のロビンは、とてつもない満面の笑顔を見せていた。
「ただ呼吸するだけでなく、人間らしく生きたい」
28才で余命三か月と宣告されてから、64才で亡くなるまで、36年間。
人工呼吸器で息をしながら人間らしく生き抜いたロビンの笑顔。
キラキラに輝いていた。
2017年イギリス