『くるみ割り人形と秘密の王国』ナッツクラッカーの決定版!になるはずが……
むかし、E・T・A・ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王様」が大好きな女の子がいました。
女の子は、クリスマスシーズンになると毎年、「くるみ割り人形」の絵本を読んだり、チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」をyotubeで見たりしていました。
くるみ割り人形のおはなしは、世界中で愛されていて、たくさんのアニメや絵本になって販売されていました。
ところが、女の子が納得する「完璧!」とギュッと抱きしめたくなるような完全版のくるみ割り人形は、まだ世の中に作られていませんでした。
すると、2018年ディズニー製作の映画『くるみ割り人形と秘密の王国』が公開されました。
女の子は、ようやく「完璧!」な、くるみ割り人形のお話を見られるとワクワクして劇場にむかいました。
Tchaikovsky - The Nutcracker, Ballet in two acts | Mariinsky Theatre (HD 1080p)
ところが……
登場したのは、ホフマンの原作とはかけ離れた世界観のお話でした。
大好きなラッセ・ハレストレム監督持ち前のストーリーテリング能力がまったく生かされていませんでした。
ディズニー様は、CG神に頼りすぎていました。
お金をかけて豪華な秘密のCG王国を作りあげていたのは素晴らしいと思います。
ファンタジーな雰囲気は、たっぷり楽しむことができます。
クリスマスシーズンにピッタリの映画です。
しかし、雰囲気だけでは女の子は納得できませんでした。
ディズニー様の本来の使命は、世界中の子供たちが心から入り込める「おはなし」を創ることです。
もう一度、原点に帰ってお話づくりを見直してほしいと心から望みました。
ワクワクさせてくれるストーリーさえあれば、CG神の力はそんなに必要ないのです。
女の子は、映画館を出て、トボトボと家に帰りました。
そして、自分の持っているナッツクラッカーの飛び出す絵本を読み返しました。
実は、この絵本の絵にも心から納得しているわけではありません。
完璧なナッツクラッカー(くるみ割り人形)のおはなしを、いつか見てみたいという夢だけが残ってしまいました。
おしまい
原題:The Nutcracker and the Four Realms
2018年アメリカラッセ・ハルストレム、ジョー・ジョンストン監督
配給ディズニー